ミャンマーの祝日・休日:文化を紐解く暦
ミャンマーの文化や社会に関心を寄せる人々にとって、現地の暦と祝日制度の理解は欠かせません。ミャンマーでは、グレゴリオ暦(西暦)に加えて、仏教の伝統に基づくビルマ暦が併用されています。
人々のアイデンティティを形作るビルマ暦の「曜日」
ビルマ暦は、月の満ち欠けと太陽の動きを基準にした太陰太陽暦です。紀元638年を元年とし、日本の旧暦と同様に、仏教行事や伝統的な祭りの日付を決定するために重要視されています。そのため、ミャンマーの正月「ティンジャン」や満月を祝う祭事などは、毎年日付が変わります。
この暦は、人々の日常生活に深く根ざし、個人のアイデンティティを形作る上で不可欠な要素となっています。特に、生まれた曜日は非常に重要視されており、ミャンマーの人々は自分が何曜日に生まれたかを必ず把握しています。これは、日本の血液型占いや六曜のように、文化に深く結びついたものです。
ビルマ暦では、水曜日が午前と午後に分かれるため、曜日は合計8つに分けられます。それぞれの曜日には、守護動物や方位、支配星が定められており、例えば日曜日はガルーダ、水曜日午前は牙のある象が守護動物とされています。この生まれた曜日は、その人の性格や運勢、他人との相性を決めると考えられています。
ミャンマーの人々は、以下のような場面で生まれた曜日を重要視しています。
- 命名: 子どもの名前に、生まれた曜日にちなんだ言葉を入れることがあります。
- 寺院での参拝: パゴダ(仏塔)には、8つの曜日に対応した祭壇が設けられており、人々は自分の生まれた曜日の祭壇で祈りを捧げます。
- 占い: 曜日ごとの性格診断や相性占いが盛んです。
多様な文化を尊重する祝日制度
ミャンマーの祝日は「休暇及び休日法」に基づき、政府の通知によって定められます。この制度には、多様な文化が反映されています。国民の多数を占める仏教行事が中心ですが、イスラム教やヒンドゥー教、キリスト教など、多様な宗教の重要な日も国民の祝日として尊重されています。
連邦国家ならではの州・地域ごとの祝日
連邦国家であるミャンマーでは、全国共通の祝日とは別に、各州や地域ごとの独自の祝日が存在します。これらの祝日は、州政府が決定し、その地域に住む主要民族の文化や伝統を尊重するために設けられています。たとえば、カイン族の新年を祝うカイン新年は、民族固有の暦に基づいて日付が決定されます。また、カチン州の日(1月10日)は、カチン族の統一を記念する日であり、カチン族の新年のお祭り「マナウ・フェスティバル」の一部として盛大に祝われます。
祝日発表と振替休日
ミャンマーの祝日情報は、主に2つの政府系サイトで確認できます。一つは、国の公式総合窓口である「ミャンマー・ナショナル・ポータル」です。もう一つは、投資・企業管理局(DICA)が運営する、ビジネス実務や法的な公休日を管理するサイトです。
2026年の祝日リストは、2025年8月から9月にかけて例年より早く発表されました。これら2つのサイトでは、主要な祝日の日付は一致していますが、ミャンマーの正月である「ティンジャン(水掛け祭り)」の休暇期間の表記に違いが見られます。ナショナル・ポータルでは伝統的な祝日期間(4月13日から17日)を中心に記載されているのに対し、DICAのビジネスカレンダーでは、前後の土日を含めた「9連休(4月11日から19日)」として、銀行や企業が休業する実務的な全日程が網羅されています。
日本人旅行者にとっては、現地の役所や銀行、多くの商店が実際に休業し、街全体が祭り一色になる期間を正確に把握できるDICAの情報がより有益です。
なお、ミャンマーでは週休2日制が定着していますが、祝日が土曜日や日曜日と重なった場合でも振替休日はありません。2020年に一度は振替休日制度が導入されたものの、2022年に撤廃されています。そのため、旅行計画を立てる際は、祝日当日だけでなく連休の実態を反映した最新のカレンダーを確認することが重要です。
2026年ミャンマーの祝日/休日カレンダー
赤字:国全体の祝日。
オレンジ:州の祝日。
- 2026年1月1日(木) 元旦 / International New Year’s Day
- グレゴリオ暦の新年元旦で、家族や友人と集まり、新しい年の到来を祝います。2026年も国の祝日です。
- 2026年1月2日(金)~1月3日(土)頃 アーナンダ寺院祭(パゴダ・フェスティバル)
- 世界遺産バガンのアーナンダ寺院で開かれる国内最大級の寺院祭です。祝日ではありませんが、数万人の参拝客と大規模な門前市で街が埋め尽くされ、バガン周辺の宿泊や交通が極めて混雑する重要な文化的イベントです。
- 2026年1月4日(日) 独立記念日 / Lut lat yay nei / Independence Day
- 1948年にイギリスから独立した日を記念し、全国で式典やパレードが行われます。ヤンゴンを中心に盛大に祝われます。
- 2026年1月10日(土) カチン州の日 / Kachin State Day
- カチン族の統一と連邦加盟を記念し、カチン州で伝統的な「マナウ・フェスティバル」が盛大に開催されます。
- 2026年1月17日(土) 春節(旧正月)/ Chinese New Year
- 2026年は1月17日が旧暦元旦にあたり、中国系コミュニティを中心に祝われ、各地でイベントが開催されます。
- 2026年1月18日(日) カイン(カレン)新年 / Kayin New Year Day
- ミャンマー東部に居住するカイン族の独自の暦による新年を祝う公休日です。民族舞踊や音楽などの伝統行事が盛大に行われます。
- 2026年2月3日(火) モン建国記念日 / Mon National Day
- モン族の建国を祝う日で、モン州を中心に伝統行事や祭典が催されます。毎年日付が変動します。
- 2026年2月12日(木) 連邦記念日 / Pyidaungzu nei / Union Day
- 民族間のパンロン協定調印を記念し、国の団結と協力を祝う日です。各地で祝賀イベントが行われます。
- 2026年2月18日(水)頃~3月19日(木)頃 ラマダン(断食月)
- イスラム教の聖なる月です。祝日ではありませんが、国内のムスリム系企業や商店の営業時間が変更される場合があります。期間終了直後の3月20日(金)頃は「断食明け祭(エイ・アル=フィトル)」となり、公休ではないものの多くのムスリム系商店が休業するため、実務上の注意が必要です。
- 2026年2月19日(木) チン州の日 / Chin National Day
- チン族の民族性を祝う日で、チン州で伝統的なスポーツ大会や文化行事が行われます。
- 2026年3月2日(月) 農民の日 / Taungthu le thama nei / Peasants Day
- 農業と農民の努力を讃える記念日です。2026年は後述するタバウンの満月祭と同日になりますが、例年3月2日に固定されている祝日です。
- 2026年3月2日(月) タバウンの満月祭 / Dabaung la pyei nei / Dabaung Full Moon Day
- ビルマ暦タバウン月の満月を祝う仏教行事です。2026年は西暦の3月2日にあたり、農民の日と重なる形で公休日となります。
- 2026年3月27日(金) 国軍記念日 / Tatmadaw nei / Armed Forces Day
- 1945年の独立運動蜂起を記念し、軍事パレードや追悼式典が開催されます。国の重要な祝日です。
- 2026年4月11日(土)~4月19日(日) ティンジャン祭(ミャンマー新年休暇) / Thingyan Water Festival & Myanmar New Year
- ミャンマーで最も重要な伝統行事である水掛け祭りと、それに続く新年を祝う大型連休です。ナショナル・ポータルでは伝統的な期間である4月13日から17日が祝日として記載されていますが、DICAの公示に基づき、前後の土日を含めた4月11日から19日までの9日間が実質的な公休日となります。この期間、役所や銀行、多くの商店が休業し、国中が祝祭ムードに包まれます。
- 2026年4月30日(木) カソン月の満月祭 / Kason la pyei Boda nei / Kasone Full Moon Day
- 仏陀の誕生、悟り、入滅(入涅槃)の3つの聖なる出来事が重なった日として、菩提樹に水を掛ける儀式などが各地の寺院で行われます。2026年は4月30日が祝日となります。
- 2026年5月1日(金) メーデー(労働祭) / May Day / World Workers’ Day
- 世界の労働者の権利を称える国際的な祝日です。2026年は前日のカソン満月祭から続く連休となります。
- 2026年6月16日(火) メッカ巡礼祭(犠牲祭) / Eid Al-Adha
- イスラム教の重要な宗教祝日で、メッカ巡礼の最終日にあたります。2026年は6月16日に当たります。
- 2026年7月18日(土) 殉教者の日 / Martyrs’ Day
- 独立運動のリーダーアウン・サン将軍らが暗殺された日を悼み、全国で追悼式が行われます。
- 2026年7月29日(水) ワーゾォ祭(雨安居入り) / Waso Full Moon Day
- ビルマ暦ワーゾォ月の満月の日で、僧侶が寺院に籠もって修行を行う「雨安居(うあんご)」の始まりを告げる神聖な祝日です。2026年は7月29日にあたります。
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- 2026年10月25日(日)~10月27日(火) タディンジュ満月祭 / Thadingyut / Thadingyut Full Moon Day
- 雨安居の明けを祝う「灯火祭り」として知られ、仏陀を地上に迎えるために家々や寺院が灯火で美しく飾られます。2026年は満月当日である10月26日を中心に、前後を合わせた10月25日から27日までの3日間が公休日となります。
- 2026年11月23日(月) シャンの新年 / Shan New Year
- シャン族の伝統的な新年で、シャン州を中心に祭典や文化行事が行われます。日付は毎年変動します。
- 2026年11月24日(火) ダザウンモン満月祭 / Tazaungmone / Tazaungmone Full Moon Day
- ビルマ暦ダザウンモン月の満月を祝う祭りで、僧侶に新しい法衣を献納する「カティン儀式」の締めくくりとなります。各地で熱気球を打ち上げたり、灯明を捧げたりする伝統行事が行われます。2026年は11月24日が公休日です。
- 2026年12月4日(金) 国民の日(建国記念日) / National Day
- 1920年に起きた学生による対英抗議運動を記念する日です。ミャンマーのナショナリズムの象徴的な日として、各地で式典が行われます。2026年は12月4日にあたります。
- 2026年12月7日(月) ラカイン州の日 / Rakhine State Day
- ラカイン族の歴史と文化の再興を祝う日で、州内で式典やパレードが開催されます。
- 2026年12月25日(金) クリスマス / Hkarissamat nei / Christmas Day
- イエス・キリストの誕生を祝う日で、教会での礼拝や家族での祝いが行われます。

