
カオパンサー(Khao Phansa / 入安居)は、タイの仏教徒にとって非常に重要な日です。アサラハブチャーの翌日、陰暦の8月の欠け始めの1日(新月の前日)にあたります。この日から3ヶ月間、僧侶たちは寺院にこもり、修行と瞑想に専念します。
これは、雨季(モンスーン)の期間中、外を歩き回ることで、畑の作物を踏み荒らしたり、小さな虫を不用意に殺生してしまったりするのを避けるため、という古くからの戒律に由来しています。
この期間中、僧侶は特別な事情がない限り、寺院から外出することが許されません。また、この時期にタイの男性が一時的に出家する習慣も根強く残っています。
2025年、2026年、2027年のカオパンサー
カオパンサーは陰暦に基づいているため、毎年日付が変わります。
- 2025年7月11日(金)
- 2026年7月30日(木)
- 2027年7月20日(火)
タイの正式な祝日であり、禁酒日
カオパンサーもまた、タイの正式な祝日です。そして、アサラハブチャーと同様に、この日は全国的にアルコール類の販売が終日禁止されます。これは、仏教の重要な日として、国民全体で戒律を守り、功徳を積む期間の始まりを祝うためです。
コンビニエンスストアやスーパーマーケットでのアルコール購入はできず、バーやナイトスポットも休業またはアルコール提供を停止します。アサラハブチャーと合わせて2日間の禁酒となるため、旅行の際は特に注意が必要です。
レストラン・食堂の営業について
アサラハブチャーと同様に、カオパンサーの日もレストランや食堂の営業自体は通常通り行われることがほとんどです。
- ちゃんとしたレストラン(ファインダイニング、ホテル内のレストランなど): 通常通り営業している店舗が多いですが、アルコール提供は終日停止されます。
- 庶民的な食堂、屋台、フードコート: これらも通常通り営業しています。地元のタイ人も食事をするため、基本的に営業に影響はありません。ただし、アルコール販売は行いません。
アルコールが飲めないことを除けば、普段と変わらずタイ料理を楽しむことができます。
アサラハブチャー・カオパンサー連休のタイ人の過ごし方
アサラハブチャーとカオパンサーは、多くのタイ人にとって仏教的な意味合いの強い連休となります。一般的な過ごし方は以下の通りです。
- 寺院への参拝とタンブン(功徳積み): 最も顕著な行動は、家族や友人と共に寺院を訪れ、功徳を積む(タンブン)ことです。早朝から僧侶への布施や献水、礼拝が行われ、特にアサラハブチャーの夜にはロウソクと花を持って本堂の周りを右回りに3周するウィアンティアンに参加します。カオパンサーの日には、僧侶が雨季の修行中に使うロウソクや日用品(石鹸、洗剤、シャンプーなど)を寄進する習慣があります。
- 一時出家: カオパンサーは、タイの男性が一時的に出家するのに適した時期とされています。数週間から数ヶ月間、僧侶として寺院で修行することで、親への恩返しや自己鍛錬を行う大切な伝統です。この時期、多くの寺院で出家式が行われます。
- 家族との時間: 祝日ということもあり、家族で集まって食事をしたり、近場の親戚を訪ねたりする人も多くいます。ただし、アルコール販売が禁止されるため、通常のお祭りとは異なり、飲酒を伴う宴会は行われません。
- 観光・旅行: アルコール規制があるため、一般的に派手な旅行やナイトライフを楽しむ目的での国内旅行は少なめです。しかし、中には親戚のいる地方へ帰省したり、仏教関連のイベントが盛んな地域(特にロウソク祭りが開催されるウボンラチャタニなど)へ足を運んだりする人もいます。静かに過ごしたい人にとっては、ビーチリゾートなどでリラックスする選択肢もありますが、飲酒が目的の旅行は避ける傾向にあります。
この連休は、タイの国民にとって、仏教の教えを再確認し、精神性を高める貴重な機会となっています。

カオパンサーの過ごし方:タンブンとロウソク祭り
カオパンサーは、僧侶が修行に入る大切な日であると同時に、仏教徒が功徳を積む「タンブン(功徳を積む行為)」を積極的に行う日でもあります。そして、このタンブンの象徴的な行事の一つとして、全国各地で「ロウソク祭り」が開催されます。
タンブン(功徳を積む行為)
カオパンサーの日は、多くのタイ人が寺院を訪れて「タンブン」を行います。タンブンとは、徳を積むことで来世の幸福や現世での良い報いを得るという仏教の教えに基づく行為です。カオパンサーにおけるタンブンの主な内容は以下の通りです。
- 僧侶への食事の提供: 早朝からお坊さんに食事を差し上げる「タクバート」を行います。
- お布施: 寺院の維持や僧侶の生活のために金銭を寄付します。
- 日用品の寄進: 雨季の修行に入る僧侶が寺院にこもるため、ロウソクや洗剤、石鹸、シャンプー、飲み物、インスタント食品などの日用品を寄進します。
- ロウソクの寄進: 特にロウソクは、修行中の僧侶が暗闇で勉強や瞑想を行うための灯りとして非常に重要視されており、ロウソクの寄進は大きな功徳になるとされています。
このタンブンを通して、タイの人々は精神的な安らぎと幸福を追求し、仏教への信仰を深めます。
一層盛り上げます。この祭りは、単なる観光イベントではなく、タイ仏教の信仰心と芸術性が融合した、非常に文化的な深みのある行事です。

ロウソクの寄進から発展した「ロウソク祭り」
カオパンサーにおける「ロウソクの寄進」というタンブンの習慣は、特にタイ東北部を中心に、やがて「ロウソク祭り(キャンドル・フェスティバル)」という壮大な祭りに発展しました。これは、単なるロウソクの寄進から、精巧な彫刻が施された巨大なロウソクの山車を制作し、パレードで披露するという、芸術性と信仰が融合した独自の文化が生まれたためです。
このロウソク祭りの詳細については、ぜひこちらの記事をご覧ください。
熱気あふれるタイのロウソク祭り:ウボンラチャタニ・キャンドル・フェスティバルの魅力