旧暦8月15日、シンガポールは中秋節（Zhōngqiū Jié / Mid-Autumn Festival）の華やかな雰囲気に包まれます。街全体がランタンの幻想的な光に彩られ、伝統的な月餅（げっぺい）は毎年驚くような進化を遂げ、熾烈な「月餅商戦」を繰り広げます。そんなシンガポール中秋節の魅力を、旅のヒントとともにお届けします。伝統と革新が共存する、この特別な祭典を体験しに、シンガポールへ出かけてみませんか。
2025年、2026年、2027年の中秋節の日程
- 2025年10月6日（月）:
- 2026年 9月25日（金）:
- 2027年9月15日（水）:
中秋節は、旧暦の8月15日にあたります。毎年日付が変わりますので、旅行の計画を立てる際は以下の日程を参考にしてください。
中秋節のルーツ：月を愛でる古来の習わしから現代へ
中秋節は、旧暦の8月15日、一年で最も月が美しく、豊かさの象徴として輝く時期に祝われる、中華圏にとって非常に大切な伝統行事です。その起源は古く、古代中国で月を崇拝し、豊かな収穫に感謝する習わしに由来すると言われています。この行事には、家族や親しい人々が一堂に会し、共に月を愛で、分かち合うことで、「家族団欒（だんらん）」と幸福を願う意味合いが込められています。
この「月を愛でる文化」は、日本にも深く根付いています。日本で広く親しまれている「十五夜」や「お月見」も、実はこの中国の中秋節と同じルーツを持つ行事です。日本の十五夜では、ススキを飾り、収穫したばかりの里芋や栗、そして米粉で作った月見団子を供え、静かに月を眺めます。
一方、中華圏では、月餅を家族で分け合って食べるのが定番です。同じ月を愛でる文化でも、それぞれの地域が独自の発展を遂げてきた、興味深い背景があるのです。
シンガポール中秋節の「顔」：毎年白熱する月餅商戦！
シンガポールの中秋節を語る上で欠かせないのが、毎年熱気を帯びて繰り広げられる月餅商戦です。中秋節の数週間前から、デパートの特設会場や高級ホテルのロビー、有名パティスリーは、趣向を凝らした月餅で埋め尽くされます。贈答文化が根付くシンガポールでは、月餅は大切な人への感謝やビジネスの挨拶として贈られるため、その品質やパッケージデザインにも細部にまでこだわりが詰まっています。
伝統と革新が融合する月餅の多様性
シンガポールの月餅は、伝統的なものから驚くほどクリエイティブなものまで、その多様性が大きな魅力です。
- 伝統的な焼き月餅: 蓮の実餡やアヒルの卵黄入りなど、香ばしい皮と濃厚な餡が特徴の定番フレーバーは、今も根強い人気を誇ります。
- スノースキン月餅: 冷やして食べるこのタイプは、餅のようなもちもちとした皮と、フルーツやチョコレートなどの冷たい餡の組み合わせが特徴で、近年特に人気を集めています。
- ユニークな限定月餅: シンガポールの月餅商戦を特に面白くしているのが、各ブランドが競い合うように発表する斬新な限定フレーバーです。例えば、シャンパンやトリュフ、燕の巣といった高級食材を使ったものから、ドリアン味、コーヒー味、さらにはカクテルをイメージしたものまで、毎年「こんな月餅が！」と驚くようなアイデアが盛り込まれます。
知っておきたい！月餅の価格感と購入のコツ
シンガポールの月餅は、種類やブランドによって価格が大きく異なります。スーパーやベーカリーでは1個SGD5〜10程度から購入できますが、デパートやホテルの高級なものでは、4個入りのギフトボックスがSGD80〜150以上になることも珍しくありません。
- スーパーや専門店: お手頃価格で、様々なメーカーの月餅が手に入ります。食べ比べ用におすすめです。
- ホテルや有名レストラン: 高品質な食材を使った高級月餅が中心です。洗練されたパッケージは、お土産や贈答用に最適です。
- 月餅フェスティバル: 中秋節の時期に各所で催される月餅フェアは、様々なブランドの月餅が一堂に会する絶好の機会です。試食もできることが多いので、自分好みの味を探すのにぴったりです。
光が彩る街：チャイナタウンのランタンとライトアップ
シンガポール中秋節のもう一つのハイライトは、チャイナタウン（Chinatown）を中心に繰り広げられる壮大なランタンの飾り付けとライトアップです。中秋節の数週間前から、チャイナタウンのメインストリートは、色とりどりの伝統的な提灯や、巨大で精巧なランタンのオブジェで埋め尽くされます。夜になると、それらが一斉に点灯し、光のトンネルを作り出します。
この時期、チャイナタウンでは、「中秋節ストリートフェア（Mid-Autumn Festival Street Fair）」がよく開催されます。月餅や伝統菓子、お茶、ランタンなどを売る屋台が軒を連ね、お祭りムードで賑わいます。多民族国家シンガポールらしく、中華系の伝統文化が洗練された都市空間の中で美しく表現される様子は、訪れる人々を魅了し、心に残る思い出となるでしょう。
シンガポール中秋節の楽しみ方と旅のヒント
9月下旬〜10月上旬にシンガポールを訪れるなら、中秋節の特別な雰囲気をぜひ体験してみてください。
- 月餅の食べ比べと購入: デパートやホテルの特設会場を巡り、様々な月餅を試食したり、美しいパッケージのものを購入したりするだけでも楽しい体験です。限定フレーバーはすぐに売り切れてしまうこともあるので、早めにチェックしましょう。
- チャイナタウンのライトアップ散策: 夜のチャイナタウンは、ランタンの光で普段とは全く異なる幻想的な表情を見せます。ストリートフェアが開催されていれば、屋台グルメも一緒に楽しめます。最寄りのMRT（地下鉄）チャイナタウン駅（Chinatown MRT Station）からすぐです。
- ホテルや観光施設での特別イベント: マリーナベイ・サンズやリッツカールトンなどの高級ホテルでも、この時期限定の月餅や特別なアフタヌーンティーが提供されることがあります。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイでは、中秋節に合わせて特別なランタン展示や文化パフォーマンスが開催されることがあり、夜のスーパーツリー・グローブとランタンのコラボレーションは必見です。
- 高層スポットからのお月見: マリーナベイ・サンズのスカイパークや、ルーフトップバーなど、シンガポールならではの絶景スポットから月を眺めるのもおすすめです。
中秋節に関するFAQ
- Q. 中秋節はシンガポールの祝日ですか？
A. いいえ、中秋節はシンガポールの公休日ではありません。通常の平日として、学校や企業は開いています。 - Q. 中秋節にシンガポールを旅行すると、お店は閉まっていますか？
A. ほとんどの店は通常通り営業しています。デパートやショッピングモール、観光客向けのレストランなどは通常通り開いていますので、観光に支障はありません。
シンガポールの中秋節は、伝統的な月見の習慣に、この都市国家特有のモダンなセンスと多様性が加わった、魅力あふれるイベントです。毎年進化する月餅のトレンドを追いかけ、光り輝くチャイナタウンを散策しながら、シンガポールならではの「美食と光の祭典」をぜひ体験しに出かけてみませんか？
