
By: Ken Marshall
台湾の秋、9月28日は「教師節(Jiàoshījié)」。これは、偉大な思想家である孔子(Confucius)の誕生日を祝う、台湾で古くから大切にされてきた記念日です。孔子の教えは儒教として、台湾社会の精神的な根幹に深く影響を与え、師を尊び、教育を重んじる文化を育んできました。この特別な日を知ることは、台湾の文化に触れる貴重な機会となります。
教師節が歩んできた興味深い変遷をたどりながら、台湾の人々が大切にする教育観や儒教文化に迫ります。この日が持つ深い意味を、一緒に紐解いていきましょう。
2025年、2026年、2027年の教師節の日程
- 2025年9月28日(日)
- 2026年9月28日(月)
- 2027年9月28日(火)
教師節は毎年9月28日です。2025年より教職員を含む全労働者の祝日(公休日)となっています。2025年は日曜日に当たるため、翌9月29日(月)が振替休日となります。
孔子の誕生日が祝日に? 台湾の教師節に秘められた儒教の心
台湾の教師節が毎年9月28日であるのは、中国の偉大な思想家であり教育者である孔子の誕生日とされています。孔子は「至聖先師(至高の聖なる先生)」と称され、その教えは儒教として台湾社会の根幹に深く影響を与えてきました。
初期の教師節は、孔子への敬意と、教育に携わる全ての人々への感謝を示す日として制定されました。この日には、孔子廟で厳かな儀式が行われ、学校では先生への感謝を伝える行事が催されるなど、社会全体で「師」を尊ぶ精神が表現されていました。孔子の教えが、知識の伝達だけでなく、人間としてのあり方や倫理観を重んじる台湾の教育観に、いかに深く根付いているかがわかります。
教師節の歴史:祝日から平日へ、そして再び祝日へ
かつて教師節は、日本でいう建国記念日や文化の日と同じように、全国民が仕事や学校を休み、教師の功績を称える祝日(公休日)でした。しかし、台湾の社会情勢の変化に伴い、その位置づけは大きく変わっていきます。
2000年の転換点:週休二日制導入と祝日の見直し
教師節が祝日(公休日)でなくなったのは、2000年のことです。当時の政府が、週休二日制を導入するにあたり、祝日の日数を調整する必要が生じたことが主な理由とされています。労働時間の短縮と国際的な労働慣行への準拠を目指す中で、教師節を含むいくつかの祝日が祝日(公休日)ではなくなりました。
これにより、一般の会社員や公務員は通常通り出勤し、多くの人々の生活から「教師節は休日」という感覚は薄れていきました。この変更は、特に教職員の間で大きな議論を呼び、「教師の日の休日を返してほしい」という声も上がったほどです。
そして再びの動き:2025年からの「国定祝日(公休日)」へ
しかし、台湾では長らく、メーデー(5月1日)が民間企業の労働者だけの休日であり、公務員や教職員は対象外でした。この不公平感を解消するため、2025年5月に立法院(国会)で法改正が承認されました。これにより、2025年以降、教師節はメーデーと同様に、教職員を含むすべての労働者にとっての「国定祝日(公休日)」となることが決定したのです。
この変遷は、台湾社会が教育や労働者の権利に対して、時代と共に柔軟に、そしてより平等な視点を持つようになってきた証とも言えるでしょう。
教師節のハイライト:孔子廟の伝統儀式『釈奠(せきてん)』とは
教師節の最も重要な行事であり、台湾の「師を尊ぶ文化」を象徴するのが、孔子廟で執り行われる「釈奠(せきてん)」の儀式です。これは、孔子とその高弟たちを祀るための非常に厳かで格式高い祭祀で、その歴史は千年以上にわたります。
厳かな儀式の流れと見どころ
「釈奠」は、通常、教師節の当日の早朝に行われます。主な見どころは以下の通りです。
- 八佾舞(はちいつぶ):64人(または8人、16人など)の舞手が伝統衣装を身につけ、厳かな雅楽に合わせて舞う儀式です。その一つ一つの動きには、深い意味が込められています。
- 献官(けんかん):各界の代表者が供物を捧げ、孔子の功績を讃えます。
- 古式の雅楽演奏:普段耳にすることのない、古楽器を用いた雅楽が奏でられ、会場全体を神秘的な雰囲気に包み込みます。
- 智慧毛(ちえもう):儀式後、供えられた牛などの供物の一部(特に毛や肉)を分けてもらう「智慧毛」という習慣があります。これを持ち帰ると、学業成就や賢明になると信じられています。
※「智慧毛」は地域や廟によって異なる習慣であり、近年は一部の廟でのみ行われています。
これらの儀式は非常に厳粛で、台湾の人々が孔子に寄せる深い敬愛と、教育に対する真摯な姿勢を肌で感じられる貴重な機会となるでしょう。
もしこの時期に台湾にいたら
もし教師節の時期に台湾に滞在する機会があれば、普段の台湾では見られない特別な文化体験ができます。
- 孔子廟を訪れる:各地の孔子廟では「釈奠」の儀式が行われます。早朝から行われるため、見学を希望する場合は事前の確認が必要です。静かに敬意を払って見学することが大切です。
- 学校や街の様子に注目する:学校によっては先生に感謝を伝える行事が行われたり、街角の掲示板などに教師節を祝うメッセージが見られるかもしれません。高価な贈り物ではなく、感謝の気持ちを伝えることが重視される文化に触れることができるでしょう。
教師節にまつわるよくある質問:Q&A
- Q. 台湾の教師節はいつですか?
A. 毎年9月28日です。孔子の誕生日とされています。 - Q. 教師節は祝日(公休日)ですか?
A. かつては祝日(公休日)でしたが、2000年に祝日(公休日)ではなくなりました。しかし、2025年からは教職員を含むすべての労働者にとっての「国定祝日(公休日)」となることが決定しており、2025年9月28日(日)の教師節については、翌日9月29日(月)が振替休日となります。 - Q. 台湾の先生にプレゼントを贈る習慣はありますか?
A. 学校によっては生徒から手作りのカードや小さなプレゼントを贈る習慣があります。高価な贈り物ではなく、感謝の気持ちを伝えることが重視されます。 - Q. 台北で教師節の文化に触れるには、どの孔子廟がおすすめですか?
A. 台北市には台北孔子廟があります。また、台湾で最も古い孔子廟は台南市にある台南孔子廟で、より伝統的な儀式を見ることができます。 - Q. 台湾で教師節に関するイベントはありますか?
A. 9月28日には、各地の孔子廟で厳かな「釈奠(せきてん)」の儀式が行われます。また、一部のデパートや飲食店では、教師証を提示することで割引を受けられるキャンペーンを実施することもあります。
台湾の教師節は、その変遷の歴史と、孔子を尊び教育を重んじる文化が色濃く反映された日です。この特別な日を知ることで、台湾の文化と精神性の奥深さを感じることができるでしょう。