陰暦1月15日のチョンウォル・テボルム(정월 대보름)は、旧暦新年後に初めて迎える満月の日です。東アジアの月待信仰に連なる季節儀礼であり、再生や循環の象徴として理解されてきました。
朝鮮半島では、この日が農耕周期の始まりを告げる節目とされ、自然への祈願と共同体の結束を確認する重要な時間でもありました。現代韓国においても、失われることのない文化的記憶として継承されています。
【2026年〜2028年】テボルムの開催日程と時期
- 2026年3月3日(火)
- 2027年2月20日(土)
- 2028年2月9日(水)
韓国のテボルムに伝わる由来と生活の知恵
家庭の中に残る食習慣と伝統儀礼
テボルムは本来、各家庭で営まれる生活儀礼でした。現在の都市部でも、五穀飯(オゴッパプ/오곡밥)やナムルを食べ、プロム(부럼)と呼ばれる殻の固いナッツ類を噛むといった食習慣は、静かに受け継がれています。少量の酒を飲む耳明酒(クィバルギスル/귀밝イススル)などの挨拶も、形を変えながら残存しています。
こうした「新年最初の満月を祝う」「農業の豊作を祈る」「特別な粥や飯を食べる」といった共通の精神性を持つことから、テボルムはちょうど日本でいう小正月にあたる位置づけの行事であるといえます。ただし、韓国現地で小正月という表現が使われることはなく、古くからテボルムの名称で親しまれてきました。現代の大規模な行事以上に、個々の家庭の食卓にこそ、文化継承の真の姿があるといえます。
農村社会における実践的・合理的な風習の意味
前近代の農村では、テボルムの風習は生存環境を維持するための知恵の集合体でした。くるみや落花生などのプロムを噛む行為は、栄養補給に加え、固いものを砕くことで歯の健康状態を確認する実利的な意味がありました。また、火を用いるネズミ火遊び(チュィブルノリ/쥐불놀い)は、害虫駆除と土壌改良を伴う農法的な合理性を持っていたのです。これらは厳しい自然の中で生活を最適化するための手段でした。
現代韓国の都市社会における伝統の再定義
都市化による文化保存と公共的な祝祭への変遷
高度成長期以降、共同体儀礼は生活空間から切り離されました。しかし1980年代後半、農村文化を国家的資産として再評価する動きが強みます。特に1988年のソウル(서울)オリンピックを契機に、自治体主導の再現行事が整備されました。伝統は単に消滅したのではなく、都市社会の枠組みに適応する形で再構築されました。今日では、都市生活者がルーツを共有するための公共的な祝祭としての役割を担っています。
旅行者が知っておきたい現代的な文化的視点
テボルムの本質は、イベントの規模ではなく、季節の移ろいと自身の身体を結びつける豊かな生活感覚にあります。家庭で大切にされてきた食習慣に目を向けてみると、五穀飯やナムルには、冬から春への移行期を健やかに乗り越えるための優しい知恵が込められていることがわかります。こうした背景にある自然への敬意や合理性を知ることで、目の前の儀式がより深く、温かみを持ったものとして感じられるはずです。
ソウルで伝統行事を体験するなら:南山コル韓屋村
文化施設で再現されるテボルムの伝統プログラム
家庭や農村の伝統は、現在ではソウル市内の文化施設でも広く体験できます。例えば南山コル韓屋村(ナムサンコル・ハノクマウル/남산골 한옥マウル)では、歴史様式に基づき、都市型に最適化された再現行事が行われます。願いを書いた紙を燃やすタルジッ焼き(タルジッティウギ/달집태우기)や、橋を踏んで健康を願うタリパルギ(다리밟기)が公開され、文化の深層に触れられる機会を提供しています。
南山コル韓屋村の概要と観光基本情報
朝鮮時代の邸宅が保存された空間で、現代に復元された火の儀式を安全管理の下で詳細に観察できます。かつての農村文化がどのように都市の景観と融合し、再構築されたのかを体感できる貴重な文化拠点<です。
- 住所
- ソウル特別市中区退渓路34キル28
- アクセス
- 地下鉄3・4号線「忠武路(チュンムロ/충무로)」駅 3・4番出口より徒歩約5分
- 営業時間
- 9:00~20:00(月曜定休)
- 入場料
- 無料(一部の体験プログラムは有料)
- 公式サイト
- 南山コル韓屋村公式HP(韓国語・英語)

