
2025年10月5日(日)から7日(火)は、韓国にとって一年で最も大切な祝日、秋夕(チュソク)の連休です。日本のお盆や中国の中秋節とルーツを共有するこの時期、韓国は普段とは全く異なる表情を見せます。この時期、街は普段の喧騒を忘れ、故郷へ向かう「民族大移動」が最高潮に達します。
その一方、古宮では色鮮やかな韓服をまとった人々が集い、茶礼や伝統遊びに興じる姿が見られます。街全体が静けさの中に温かい祝祭感に満ちた、一年で最も特別な雰囲気に包まれるのです。
この記事では、秋夕が韓国の人々にとって持つ深い意義や具体的な過ごし方を解説します。さらに、この特別な時期に韓国への渡航を計画している方のために、交通や店舗の状況、そして秋夕ならではの文化体験が叶うスポットについても詳しくご紹介します。
2025年、2026年、2027年の「秋夕(チュソク)」の日程
- 2025年10月5日(日)〜10月7日(火)※10月8日(水)は振替休日
- 2026年9月24日(木)〜9月27日(日)※9月27日(日)は振替休日
- 2027年9月14日(火)〜9月16日(木)
秋夕(チュソク)とはどんな日? 韓国最大の祝日の全貌
秋夕は旧暦8月15日、一年で最も月が美しく輝き、豊かな収穫に感謝する時期に祝われる東アジア全体に共通する伝統的なお祭りです。2025年は10月6日(月)が旧暦8月15日に当たります。前後1日ずつと合わせて3日間が休みとなり、旧正月(ソルラル)と並ぶ重要な日とされています。韓国の秋夕は、特に「先祖への感謝と家族の絆」に重きを置く点で、他の国々とは異なる特徴を持っています。
東アジアに共通する「収穫と月への感謝」
旧暦8月15日は、もともと収穫に感謝し、満月を愛でるお祭りとして広く伝わりましたが、それぞれの国で独自の発展を遂げています。たとえば、中国や台湾の中秋節では、家族の「団欒」を重視し、月餅を分け合い、ランタンを飾って月を愛でるのが一般的です。台湾では、家族でバーベキューをするという国民的な習慣が定着しています。
一方、日本では十五夜としてススキを飾り月見団子を供えて月を鑑賞する風習があり、またお盆として先祖の霊を迎えて供養する重要な期間となっています。
韓国の「二大名節」と「民族大移動」の背景
こうした中で、韓国の秋夕は、旧正月の「ソルラル」と並び「二大名節」と称されるほど重要視されています。その中心にあるのは、先祖への茶礼(チャレ)という祭祀やお墓参り(ソンミョ)です。多くの国民が故郷に帰省するため、この時期には日本のお盆や年末年始の帰省ラッシュにも似た、国を挙げての「民族大移動」が起こるのです。
秋夕の主な過ごし方:伝統と家族の絆
秋夕期間中、韓国の人々は具体的にどのような過ごし方をするのでしょうか。
茶礼(チャレ):先祖への感謝の儀式
秋夕の朝、家族や親族は故郷の実家や宗家(本家)に集まり、祖先の霊を迎え、感謝を捧げる「茶礼」を行います。これは、故人を偲び、家門の繁栄を祈る大切な儀式です。
茶礼の準備は、まず前日から始まり、女性陣を中心に多くの料理が作られます。秋夕当日朝には、祭祀膳(チェササン)と呼ばれる低い膳に、餅や果物、肉、魚、煎(ジョン)と呼ばれる韓国風お好み焼きなど、伝統的な二十数種類もの料理が美しく並べられます。それぞれの料理には供える位置や順番など厳格な決まりがあり、家族が協力して準備を進めます。
茶礼が始まると、男性陣が中心となり、先祖への深い敬意を示すため、お辞儀を繰り返したり、お酒を注いで捧げたりします。この間、家族は静かに故人を思い、共に時間を過ごします。儀式が終わると、祭祀膳に供えられた料理を家族全員で分け合い、「ウムボク(음복)」としていただきます。これは先祖と共に福を分かち合うという意味が込められており、家族の絆を再確認する大切な時間です。

省墓(ソンミョ):お墓参り
茶礼が終わった後には、家族総出で先祖のお墓参り(ソンミョ)に出かけます。この際、お墓の周りの草むしりや清掃を行い、きれいに整えるのが一般的です。遠方の墓地へも足を運ぶため、特にこの時期は郊外への移動が集中します。

ソンピョン(松餅)作り:秋夕の味覚と伝統
秋夕を代表する食べ物といえば、半月型のもち米で作られたソンピョンです。家族で集まってソンピョンを作るのは、秋夕の伝統的な光景。美しく作ると良い伴侶に恵まれる、といった言い伝えもあります。

家族の団欒と伝統遊び
普段は離れて暮らす親戚たちが長時間一緒に過ごし、語り合い、絆を深めます。現代では大規模な伝統遊びを行う家庭は少ないものの、ユンノリ(韓国すごろく)のような手軽な遊びを楽しむ家庭は多く見られます。また、古宮や民俗村などでは、秋夕の時期に特別な民俗イベントとして、綱引きや韓国相撲(シルム)、女性たちが手をつないで輪になって歌い踊るカンガンスルレなどの伝統遊びが開催され、多くの人々が参加しています。
3. もし秋夕期間に韓国を旅行するなら…徹底注意点
秋夕期間(2025年10月5日~7日、および振替休日の8日)に韓国への渡航を計画している場合、普段の旅行とは大きく異なる状況となるため、以下の点に特に注意が必要です。
交通機関は大混雑!移動は困難を伴う
秋夕期間は、韓国全土で大帰省ラッシュが起こります。KTX(高速鉄道)や高速バス、国内線のチケットは数ヶ月前から予約が殺到し、一般の旅行者が確保するのは極めて困難な状況です。発売開始と同時に満席となることがほとんどでしょう。高速道路も連日、通常では考えられないほどの大渋滞が発生します。普段数時間で移動できる距離でも、半日以上かかることは珍しくありません。自家用車での移動は避けるべきですし、都市内の地下鉄やバスは比較的通常通り運行しますが、地方への移動は非常に困難になると予想されます。
店舗や施設の多くが休業
家族と過ごすのが秋夕の習わしのため、多くの店舗や施設が休業します。個人経営の飲食店や商店は、秋夕当日やその前後で閉まる場合が多く、食事場所を見つけるのが困難になる可能性もあります。東大門、南大門などの主要な市場や、多くのファッションビルも休業するところがほとんどで、ショッピングはあまり期待できません。一部の百貨店や大型マートは営業することもありますが、営業時間が短縮されたり、一部のみの営業だったりすることが多く、通常の利便性は期待できないでしょう。
観光スポットの状況と高騰する費用
多くのアミューズメント施設や美術館、博物館なども休業したり、短縮営業になったりします。事前に公式ウェブサイトなどで営業状況を徹底的に確認することが必要です。また、連休のため、航空券やホテルが通常より高騰する可能性があります。早期の予約が不可欠です。
秋夕に韓国旅行するなら? 文化体験スポットまとめ
秋夕期間の韓国旅行は制約が多いものの、もしこの時期に渡航する特別な目的があるなら、以下のような場所で秋夕ならではの文化体験ができます。ただし、いずれの場所も事前の徹底的な情報収集と計画が不可欠です。
古宮での伝統文化体験
ソウル市内にある景福宮(キョンボックン)、昌徳宮(チャンドックン)、徳寿宮(トクスグン)などの主要な古宮では、秋夕期間中に無料入場となったり、投壺や弓道体験、韓服試着、餅つき体験といった特別な民俗イベントが開催されたりすることが多いです。家族で過ごす秋夕の雰囲気に触れる貴重なチャンスとなるでしょう。内容は例年の傾向に基づいています。最新情報は必ず公式サイトをご確認ください。
南山コル韓屋村(ナムサンコルハノクマウル)
ソウル市内にありながら、伝統的な韓国の家屋が保存されているこの場所でも、秋夕期間中に伝統遊びの体験やソンピョン作りなどのイベントが開催されることが多く、都心で手軽に秋夕文化に触れることができます。
韓国民俗村(ハングンミンソクチョン)
ソウル近郊(京畿道龍仁市)にある大規模な野外博物館で、本格的な伝統家屋や生活様式が再現されています。秋夕期間中は、大規模な民俗イベントや伝統公演が企画されることが多く、より深く韓国の秋夕文化を体験したい方にはおすすめです。ソウルからのアクセスは混雑が予想されるため、早めの移動や代替手段の検討が必要です。
テーマパーク(遊園地)
ロッテワールドやエバーランドなどの大規模テーマパークは、秋夕期間中も営業していることが多いです。帰省する人が多いため、普段よりは空いている可能性があります(ただし、完全ではありません)。施設内で食事やエンターテイメントが完結するため、外部店舗の休業の影響を受けにくいという利点もあります。
よくある質問:Q&A
- Q. 2025年の秋夕はいつですか?
A. 旧暦の8月15日である10月6日(月)を中心とした連休で、2025年10月5日(日)から7日(火)までです。10月8日(水)は振替休日となります。旅行計画の際は最新の祝日情報をご確認ください。 - Q. 秋夕期間に韓国旅行はできますか?
A. 渡航自体は可能です。しかし、一般的な観光を目的とするなら、この期間は避けることを強く推奨します。交通機関の混乱や多くの店舗休業といった影響が大きいからです。もし秋夕の文化体験に特化した旅であれば、綿密な計画の上で検討する価値はあります。 - Q. 秋夕期間中、お店は全て閉まりますか?
A. 全てではありませんが、個人商店や小規模な飲食店、市場のほとんどは休業します。一部店舗は営業する場合もありますが、通常通りの品揃えやサービスは見込めません。 - Q. 秋夕の期間、交通機関は動いていますか?
A. 運行はしていますが、極めて混雑します。長距離移動のチケットは数ヶ月前から争奪戦となり、高速道路は大渋滞するでしょう。都市内の地下鉄やバスは比較的通常通り運行しますが、地方への移動は非常に困難を伴います。
韓国の秋夕は、国民が家族との絆を深め、先祖に感謝を捧げる、一年で最も大切な祝日です。この時期の韓国は、普段とは全く異なる特別な雰囲気に包まれます。
秋夕期間だからこそ出会える韓国の温かい家族の絆と伝統文化。もしこの時期に韓国への渡航を検討されるのであれば、秋夕文化への深い理解と、事前の徹底した情報収集、そして柔軟な旅の計画が何よりも重要です。ぜひ、計画的に特別な体験を楽しんでください。